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「情報」を制する者は「世界」を制す

平成27年 新春労使懇談会 記念講演

Think Ahead -「情報」を制する者は「世界」を制す-

2015年 1月26日(月) 15:45-17:00
専修大学/ 日本オリンピック委員会情報戦略部門 教授/部門長 久木留 毅 氏

1.なぜトップスポーツの世界で「情報」が力を持つのか?

映画「マネーボール』(Moneyball)は、    弱小オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー(GM)、ビリー・ビーンがサイバーメトリクスを用い経営危機に瀕した球団を再建する2011年のアメリカ合衆国の映画。ヤンキースの1/3の予算で地区優勝を争ったのは「情報」を駆使したからであった。
日本のオリンピック招致が決まったのは2013年9月8日、招致に最初に名乗りを挙げたのはマドリッド、次いでイスタンブール、後発の東京に決まったのは情報戦に勝利したからであった。国内のみならず、世界に出て情報を入手する。今日のスポーツ界では、情報をもとに戦略を立てるビジネスが盛んである。

2.スポーツの中で繰り広げられる情報戦略とは?

-情報戦略についてこれまでの活動からその一旦を紹介
 
情報を示す時の鍵は「可視化」である。例えば、論文の中でのキラーコンテンツはグラフや表である。●客観的な指標を示す●映像で示す●分析を加えて示す●情報を示すことが必要だ。
 
また、情報は多量にあるとしてもどの情報を取るか、最近、ビッグデータが話題になるが、どの情報を取るかの切り口が重要だ。切り口を決め、最終的に判断するのは人である。
スポーツの世界では1998年頃から「情報戦略」という言葉を使うようになった。柔道では試合の映像をすべて撮影、ネットに乗せ、登録しているチームは誰でも見られる。しかし、情報戦略は映像分析に留まらない。「意志決定者が的確に判断、決断し、効力を発揮する一連の流れ」である。監督に情報が渡され、監督が的確な判断、決断をし、フォーメーションを決めて試合に臨み、成果を挙げた監督が名監督になる。

情報戦略には6つのキーファクターがある。
Message/Target/Contents/Operation/Sources/Effectsである。Messageは「伝えたいことが本当にあるのか?」、「情報に、伝えたいことを入れているのか?」ということ。
ターゲットは誰になるのか。もっとも大事なのはOperation‐情報の出し方、タイミング等である。今伝えるべきか、一歩引いて伝えるべきか、明日伝えるべきか、誰かに伝えてもらうべきなのか、ミスをした選手にその場で怒るのか、ロッカールームで注意するのか、明日伝えるのか。Sourcesは情報源を明確に。Effectsは、「こうなって欲しい」結果や成果を明らかにすることだ。
 
情報informationを加工、評価を加えたものをインテリジェンスintelligence と言う。結果を見て検証することも必要で、新たな情報も加えてゆく。問題意識が無いと情報は入って来ない、また、自分のチャンネルがスポーツの世界に限られれば情報も限られる。自分が勉強し続け、幅広い自分のチャンネルを持つ必要がある。

3.世界の金メダル獲得戦略

世界の強豪国のビジネスプランを紹介
カナダは2010年バンクーバー オリンピックの際、Own the Podium(表彰台を独占する)と名付けた強化戦略を作成、金メダル獲得数世界1位を成し遂げた。

興味深いのはシンガポールで、トップスポーツ、コミュニティスポーツ、学校スポーツを推進、2010年には世界最初のユースオリンピックゲームを主催した。

国ができてから50年、東京都23区ほどの面積でありながら、ハブ空港、金融ハブ
ITハブ、教育ハブ等“ハブ”戦略を展開している。「スポーツも良いコンテンツに成る」として、スポーツハブを建築、オープンさせている。スポーツ科学/医学を動員し、様々なトレーニング、治療ができる。社会的に増える医療費抑制へのスポーツ活用等、いろんな展開ができる。

ASEAN人口は5~6億、平均年齢は30歳以下である。間違いなく伸びてゆく地域だ。スポーツを通じて組んでゆくには、シンガポール/ASEANは良い相手だと思う。実際、日本スポーツ振興センターは、世界の6ケ国/地域(シンガポール、香港、オーストラリア、フランス、イギリス、ブラジル)と組む覚書を交換している。

4.情報を制する者は世界を制す

トップスポーツ界とビジネス界の共通点を探る
Think Ahead – 半歩先、一歩先を行かないと世界とは戦えない。内を見て、外を見て、どこを攻めてゆくのかを考える-ビジネスもスポーツの世界も同じではないか。オリンピック期間中でも次のオリンピックに向けて準備できるのが強豪だ。

今、日本のスポーツ界はオリンピックの4年サイクルで進行しているが、さらに8年サイクルに頭を切り替えたい。東京オリンピックの2020年以降、例えば2024年まで考えておく-Beyond 2020 だ。
24年の夏季オリンピック、18年ピョンチャン終了後の22年(中国とカザフスタンが立候補)への対応が
必要だ。22年、立候補しているのはたった2つだ。札幌が立候補していれば誘致ができたかも知れない。
しかしそれには情報が必要で、世界には情報を提供するコンサルティング会社が数多く活動していて、莫大なビジネスが進行している。それを使いこなせる人材が必要だ。

英連邦のネットワーク(Common Wealth Games Network)というネットワークがある。イギリスを軸にカナダ、アフリカ諸国、インド、パキスタン、オーストラリア、ニュージランド等の参加国を、人材が巡っている。日本のスポーツ界も、Think Aheadを実現するには、こうしたネットワークを持ち、外国人と一緒に働き、多様性と共通性を理解し、世界を視野に情報を入手し、有効な戦略を持たなければならない。


*文責:要旨は事務局による要約です。資料は講師使用のもので不許複製です。
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