本文へ移動

第1回 道路交通安全フォーラム

地域、従業員、その家族を守る-労使で取り組む道路交通安全に向けて-

平成26年11月25日(火) 13:30-17:15 於:JA共済埼玉ビル 、 出席参加:140名
 開会挨拶 山田 吉隆 埼玉県生産性本部会長 川口化学工業(株)社長
 来賓ご挨拶 小林 直哉 氏 日本労働組合総連合会埼玉県連合会
(連合埼玉)会長
 基調講演
中江 龍生 氏 京都交通事故被害者の会 古都の翼
 第一部 山村 充 氏 株式会社 堀場製作所 品質革新推進部 部長
 第二部 高橋邦雄 氏 一般財団法人 日本科学技術連盟
道路交通安全審査室 室長
 第三部 神田 良 氏 明治学院大学 経済学部教授
 閉会挨拶 小野寺 将人 一般財団法人 日本科学技術連盟理事
共催    埼玉県生産性本部  埼玉県生産性本部川口支部  一般財団法人 日本科学技術連盟
後援  (順不同)  
   日本労働組合総連合会埼玉県連合会(連合埼玉)  日本労働組合総連合会新潟県連合会(連合新潟)
   日本郵政グループ労働組合関東地方本部  関東労組川口化学支部
   東京電力労働組合埼玉総支部   川口化学工業株式会社
   東京電力株式会社埼玉支店  株式会社システム規格社
   月刊アイソス、  ビオスピクシス株式会社
   株式会社物流ウィークリー  一般社団法人埼玉県経営者協会
   公益社団法人全日本トラック協会  一般社団法人日本自動車会議所
   公益社団法人日本バス協会  一般社団法人日本自動車連盟
   一般社団法人日本自動車部品工業会  社団法人全国通運連盟
   公益社団法人自動車技術会  報映テクノサービス株式会社
   全国コイルセンター工業組合  群馬県生産性本部
   新潟県生産性本部  公益財団法人日本生産性本部

山田 吉隆 埼玉県生産性本部 会長 川口化学工業(株)社長

大きな社会問題-道路交通安全に取り組む必要
交通安全は大きな社会問題だ。平成25年60万件、死者4,373名、埼玉県でも、年間人身事故30,000件以上物損事故は12万件以上発生している。
当社でも、社員の通勤災害に遭遇した際、会社としても大きな負担となったことがある。被害者/加害者の当事者のみならず、関係者に、予期せぬ精神的、金銭的、時間的に大きな負担が強いられる。行政に任せるだけでなく、社会の一員、市民として取り組むべきである。

小林 直哉 氏 日本労働組合総連合会埼玉県連合会(連合埼玉)会長

「働くことを軸にする安心社会」を目指す
連合は675万人、埼玉県連合会は18万人の組合組織で、「働くことを軸にする安心社会」を掲げて運動している。
雇用はもとより、安心には交通安全が欠かせない。トラック、タクシー、流通/物流、配達等々の運輸労連ほか、働く仲間にとって道路交通安全は重要なテーマだ。
県、市町村に対し、「政策要請」を毎年提起しているが、今年は自転車の交通安全を挙げた。今後も広く意見を聴き、要請してゆきたい。Passive Safety/Active Safetyなど、車両側からの対応も進んでいる。

中江 龍生 氏 京都交通事故被害者の会 古都の翼

亀岡未成年暴走事故
2012年、京都府亀岡市で、18歳無職の少年が無免許運転する軽自動車が集団登校の列に突っ込み、死者4名(児童2名、妊婦1名、胎児1名)、児童7人が重軽傷を負った。私は、引率していた26歳(当時)の妹を亡くした。
2人の娘の母、妊娠7ヶ月、事故の3日前、赤ちゃんは女の子とわかったとの妹との会話が最後となった。普段通りの平凡な朝、学校まで数百メートルというところでの事故、理不尽な事故、まさかの事故はいつでも誰にも起こりうるものだ。
 
悪質な無免許運転でも「過失」なのか?
京都地裁の運転少年への刑は「自動車運転過失致死傷罪」、懲役5年以上8年以下の不定期刑。最高/懲役20年-故意犯を対象とする、より重い刑の「危険運転致死傷罪」は適用されなかった。無免許でも運転技能はあると判断されれば、過失であり、危険運転ではない。
無免許と知りながらの同乗者、クルマを貸していた所有者はいずれも18-19歳、仲間同士で30時間以上、睡眠時間もわずかでクルマを走らせていた。
 
市民感覚からかけ離れた法律 被害者団体を組織して活動
遺族は、市民感覚からかけ離れた過失致死傷罪適用に再考を求める署名活動を行い、また、法務省や国会議員に対し、危険運転致死傷罪の対象に無免許運転を加え、道路交通法の罰則強化の要望書を提出した。
被害者団体「古都の翼」は、各地の被害者や遺族と連携し、悪質運転の撲滅、被害者が納得できる法改正を目指して講演会やシンポジウム、勉強会の開催等の活動をしている。
 
深い悲しみ、理不尽への悔しさ 誰もが被害者にも加害者にも成り得る
遺族は、深い悲しみ、理不尽への悔しさ、遺族が置かれるさまざまな困難に対面する日々を過ごしている。
加害者には未来があるのに、どれだけ償われても被害者の命は帰ってこない。
H25年の年間交通事故死亡者数4,373人、無免許運転検挙数は25,746件を数え、最近ではまた、危険ドラッグによる死傷交通事故も増えてきている。誰もが被害者にも加害者にも成り得る。一人の身勝手な行動、一瞬の事故で人の運命が変わってしまう。貴重な今回の講演機会に感謝し、ご参会の皆様が、あらためて、命と、ご家族を大切にしていただくよう願っている。

道路交通安全における世界の動き、日本の動き 

山村 充 氏 株式会社 堀場製作所 品質革新推進部 部長

当社は、自動車計測システム機器環境・プロセスシステム医用システム機器半導体システム機器科学システム機器を事業分野として、内外含め社員数 5,787名、日本4社を含め、アジア、欧州、米州の内外グループ会社38社、売上高は1,381億円です。
事業推進にあたり、経営戦略の再編成/意識改革/ビジネスプロセスの再構築を 3本柱とし、「堀場統合マネジメントシステム( Integrated Management System IMS )」を構築、運用している。
ISO9001、ISO14001、OHSAS18001、ISO13485、ISO22301等のマネジメントシステムを取得導入し、2014年6月には一部上場メーカーとして日本で最初にISO39001 認証取得し運用している。
ISO39001構築・認証取得のメリット
燃料費削減、損害保険料低減、補償・治療費用の発生防止、運行効率の向上等コスト削減
ビジネス機会の喪失による損害防止企業価値、ブランド価値の向上従業員のモラル向上
が挙げられるが、道路交通安全のためのデータ収集機器であるドライブレコーダー等、道路交通安全情報機器メーカーとして、道路交通安全への貢献、事業への貢献がある。
 
社内からの声
交通事故が減るのか?
国際規格を認証受けたからといって自動的に事故は減らない。マネジメントシステムの中で何をどうやって良くして行くのか全社挙げて取り組むことが必要である。
経営からの指示、方針ありきの導入では納得感がない…
“やらされ感”の問題だが、経営上の目的や指示が的確にあるので、迷わず取り組むことができた。
実務上の負荷が発生するのではないか?
現状、何も無いところでは発生するが、すでに実施している道路交通安全への取り組みをシステムに組み入れるだけ、審査や監査のためだけの作業や事務は止める。交通安全は事務局仕事ではない。交通安全の責任は社員一人ひとりにある個々人の意識、意志、責任感が基本になる。
システム運用
トップによる安全宣言/グループ安全衛生管理年間計画/道路交通安全指針他、管理体制を推進する方針や具体的施策を運用展開している。
以下、例示したい。
運転日誌/交通事故発生時の措置/管理者用・運転指導マニュアル/管理者用・安全運転管理マニュアル社有車管理規程(運転許可、評価、安全運転表彰など)/運転労働者の健康管理/グループフォークリフト管理規程。
荷主責任として、運行管理者基礎講習を物流担当者、社有車両管理担当者が受講し、運送業での管理に対する知識習得を積極的、計画的に実施。
教育プログラム : 社有車/フォークリフト/バイク自転車安全運転講習、構内立ち入り者すべてに社員と同じ安全運転講習、車両事故社員への再教育/再発防止。
サテライトめぐり : 現地・現場の状況を見聞きし、現状を把握、事故防止への働きかけを実施。 「人、人間関係、安全への思い」が決め手になるので、日常のコミュニケーションを欠かさないよう配慮している。
HORIBA PREMIUM DRIVING : 安全運転 5則、エコドライブ 5則を記したポスター、シールとして作成、オフィス、車両で、それぞれ、意識高揚になるよう掲示している。
ドライブレコーダー搭載 : グループ全社有車両に搭載、事故データの解析や教育に活用している。

高橋 邦雄 氏 一般財団法人 日本科学技術連盟 道路交通安全審査室 室長

国連で採択された10ヶ年活動では、当時 2010年頃130万人を数える道路交通死者を半減させようとしている。交通事故は世界のどこでも若年層の死傷原因の第1位である。中所得国が事故死者の80%。
日本の交通事故は年間63万件、死亡者数は年間4,373人、負傷者数は年間78万件。さまざまな努力によりいずれも減少傾向にある。
トラック、バス、ハイタクの事業用自動車の事故削減が、「事業用自動車総合安全プラン」として国土交通省を中心に推進されている。約12万社、140万台が対象となる。
交通事故による経済的損失は途上国で年間10兆円程度、日本でも年間6兆7000億円というデータがある。
ISO 39001/道路交通安全マネジメントシステムの規格は、2年ほど前にスタートし、認証組織は現在90社で増加傾向にある。約半数が貨物運送事業者であるが、多くの企業の方に理解、活用していただきたい。

労使の社会的責任と道路交通安全

神田 良 氏 明治学院大学 経済学部教授

交通事故撲滅への社会的要求の高まりに対し、社会的責任の範囲が拡大し企業のマネジメント項目としてとらえる方向性が出てきている。
他方、リスクに対する社会的責任ビジネスとして取り組む展開もある。
地域の生活者としての労働者の理解や対応も重要と思われる。国土交通省が推進し、2006年10月に導入された「運輸安全マネジメント制度」では、トップから現場まで、PDCAサイクルで安全管理体制を構築、継続的に取り組むよう求めている。モノやヒトを動かすことがビジネスとなる分野をターゲットにしている。ISO39001は、これよりも対象事業者、組織が広がる。

事故はドライバー、個人のもの、例外的なものとの見方から脱皮し、組織的、体系的、継続的にマネジメントする仕組みや学習を作り込んでゆく、さらに組織を超え、地域社会の知恵にまで発展させたい。日本でのISO39001認証企業は、90社程度の発展途上にあり、このシステムの利点、可能性を引き出すには「使いこなす」レベルまで、知恵や知識の蓄積、共有されて行くことが必要である。

小野寺 将人  一般財団法人 日本科学技術連盟 理事

ISO39001 認証に携わり 2年弱になる。認証組織を加害者にしないとの決意で取り組んで来た。
つくづく思うのは、事故は偶然でなく必然で起きているということだ。安全やリスクを意識し、管理し、ルールを設け、なぜそうしたルールを作ったのか繰り返し学習/徹底することが事故防止最大の防御策だと思う。
地域/人々、従業員/仲間、家族を悲劇に導かないために、労使で、会社で、会社の仕組みとして道路交通安全に取り組んで欲しい。
文責:本文は事務局の責任で概要をまとめたものです。右欄のパワーポイント原稿は講師の著作です。許可なく使用することは厳禁ですのでご留意下さい。
埼玉県生産性本部
〒330-0063
埼玉県さいたま市浦和区高砂3-10-4 埼玉建設会館6F
TEL:048-762-7884
FAX:048-862-1000
E-mail:info-spc@spc-net.gr.jp
TOPへ戻る