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「はやぶさ」の成功要因と日本の技術力  

小惑星探査機「はやぶさ」の成功要因と日本の技術力

主催
公益財団法人 日本生産性本部 技術経営研究センター
ご連絡先 TEL:03-5221-8455 FAX:03-5221-8479
講師 川口 淳一郎
  小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトマネジャー
  宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 宇宙航空システム研究系 教授
開催 2011年4月27日(水) 12:45-13:30 
会場 千代田区大手町 KKRホテル東京
  本文は事務局の責任で概要をまとめたものです。
“は やぶさ”は2003年5月9日に打ち上げられ、小惑星“イトカワ”を観測、サンプル採集を試み、約7年後の昨年、2010年に帰還した。持ち帰った微粒子 の初期分析結果は、3月10日、ヒューストンでの学術会議で発表し、大きな関心から世界中から多くの科学者が集い、立見席ができた。その内容は、夏頃、科 学雑誌で公開される予定です。

1.地球誕生の頃の様子、地球起源の材料を知りたい
 地球は丸い天体、表層の地殻/海 から、中心に向かいマントル、核に分化している。マントルは岩盤でできているが流動していて、それにより地殻が移動して地震が起きる。地球のダイナミズム を知るには中身の物質を知らなければならないが、地球を中身に向かい掘り下げるのは限度がある。小惑星は分化してなく材料は表面で得られるので、そこから の試料を分析すれば、地球起源の材料を知る手がかりになる。 米ソが重ねた惑星探査は丸い惑星、分化してないイトカワ探査は世界初。
イトカワは、岩石から成るS型小惑星。他方、地球には水と有機物が豊富にあるのが特徴だが、水と有機物の故郷はC(カーボン)型小惑星、“はやぶさ”の後継機が、この、人類が未だその素顔を知らないC(カーボン)型小惑星を目指す。

2.ハイブリッド エンジン
 “はやぶさ”のメインエンジンは イオンエンジンだ。イオンエンジンのガスを放出する速度はロケットの10倍、燃費が良い。しかし推力が弱い。イトカワから離陸するための瞬発力や観測機器 を動かすにはロケットエンジンが必要だ。“はやぶさ”はイオンとロケットの2つのエンジンで動いた。この形式のイオンエンジンでは、世界最高性能、最高の 寿命。新たなアメリカの商業衛星時代にも採用されようとしている。
 
3.世界に例のないオリジナルの構想、技術
 ●イオンエンジンによる推進
自分でどこに行くかを決めて行動する自律性
試料を採集する
 ●カプセルを地球で回収する
イオンエンジンと地球スイングバイによる加速
大きさ500メートルくらいの惑星に到達させたこと
ターゲットマーカーを使ったこと等…目的も手段も世界に例の無いオリジナルだ。
NASAとの勉強会では、日本が構想、主張しても採用されず、また実施はNASAになる。アメリカの宇宙開発は日本の30倍、日本が30年かかることを 1年でやってしまう。オリジナルの、しかしリスクの大きい構想を目指すしかない。思いきったブレークスルーはオリジナル/ハイリスクからの成果だ。
 トラブルは想定しなかったのか?宇宙開発では一度打ち上げたら修理できない、アクセスできないのを前提に
バックアップを幾重にも準備する。アクセスできることを前提にする、例えば原発とは大きく異なる。
 ●100万台作る自動車でもリコールが起きる。宇宙開発では試作兼実機は1台しか作らない、日本の部品が
優秀でも、実績のない初物は敬遠されてしまう。実績のある技術をコピーして使わざるをえないのが宿命だ。
オリジナルで成功実績をあげることが実力をつけるには必要になる。
 
4.複合航法で3倍の精度、片道3億kmの通信、手探り運用に奇跡的成功
 電波航法の現在の誤差は10,000分の13億kmでは300km、例えば仙台と名古屋間くらいの距離が不明なところで、500メートルくらいのサイズの惑星を目指すことになる。地上のデータに加え、“はやぶさ”が宇宙でイトカワを追跡するデータを複合する航法で精度を3倍に上げた。
片道3億kmの通信には、往復2000秒の時間がかかる。指示には約20分かかるので遠隔操縦は無理
ターゲットマーカーをイトカワの地表に落とし、これにフラッシュを宛て、カメラでこれを撮影しながら目標として、自分で行き場所を決め、動いていた。虫が歩くほどの制御を3億kmの彼方で行うことになった。こうしたデーター、技術は最大のノウハウだ。

2回目の着陸の後で横倒しになり燃料漏れを起こし、また、太陽電池に光があたらなくなった。帰りの飛行 は、困難な通信状態な中、寿命を終えたエンジンに対し、壊れたエンジンのうちの壊れてない部分だけを組み合わせ働かす手探りの運用に奇跡的に成功し、60 億キロの旅を、最後はフラフラになって帰還し、パラシュートを開き、目標地点から500m範囲という驚異的な精度で着地した。
 
通信機器から聴こえて来るのは雑音だけ、プロジェクト室の士気が落ちる。検討会を開きアクションを出し続け、例えば運用室のポットから水が出れば足が遠のいていると思われる。
毎朝お湯を熱いものにしておく演出。
「ゴールは地球だ」 との想いを共有し、意地と忍耐で取り組んだ。精神力が重要だ。
「高い塔に登って見なければ新しい水平線は見えてこない」、投資しなければ成果はない。プロジェクトはコンセプトから25年。ローリスク/ミディアムリターンが堅実な経営だと言われるが、近視眼予算では成り立たなかった。
「運も実力に変える」 イノベーションとインスピレーションを成し遂げる。人材育成が鍵を握る。
1/8スケールモデル
小鹿野町 5/14-17 開催
帰還カプセル展示会
● 文責 : 事務局
埼玉県生産性本部
〒330-0063
埼玉県さいたま市浦和区高砂3-10-4 埼玉建設会館6F
TEL:048-762-7884
FAX:048-862-1000
E-mail:info-spc@spc-net.gr.jp
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